早期受診、早期診断、早期治療は非常に重要です。
原因が正常庄水頭症とか、脳腫瘍、慢性硬膜下血腫などの場合、脳外科的な処置で劇的に良くなる場合もあります。甲状腺ホルモンの異常の場合は、内科的な治療で良くなります。薬の不適切な使用が原因で認知症のような症状がでた場合は、薬をやめるか調整すれば回復します。ところが、こうした状態のまま長期間放置すると、脳の細胞が死んだり、恒久的な機能不全に陥って回復が不可能になります。一日も早く受診することが重要です。
アルツハイマー病では、薬で進行を遅らせることができ、早く使い始めると健康な時間を長くすることができます。病気が理解できる時点で受診し、少しずつ理解を深めていけば生活上の障害を軽減でき、その後のトラブルを減らすことも可能です。 障害の軽いうちに障害が重くなったときの後見人を自分で決めておく(任意後見制度)等の準備や手配をしておけば、認知症であっても自分らしい生き方を全うすることが可能です。
早期に診断を受けても、できるだけ自分の力で生きていきたいと思う人、あるいは、頼るべき人もなく、自分で生きて行かざるを得ない人も少なくありません。そういうときは、日常生活自立支援事業や新しい成年後見制度(補助や任意後見)を活用しましょう。かかりつけ医や相談に乗ってもらうケアマネジャーを持ち、これらの制度を十分利用すればかなり進行するまで自分の意思に沿った生活をすることができます。
終末医療や介護の方針については、信頼できるだれかに任せなければならないので自分の回りにいる人たちと十分コミュニケーションを保ち、自分の生き方や考え方を理解してもらいましょう。本人に代わって意思決定を代行するときは、本人のこれまでの人生、価値観、現在の状況、医学的な現状の評価と予後の見通しなどを参考に、決定をしなければなりません。認知症を完全に治す治療法はまだありません。そこでできるだけ症状を軽くして、進行の速度を遅らせることが現在の治療目的となります。
治療法には薬物療法と非薬物療法があります。このうち薬物療法は、アルツハイマー病の中核症状の進行をある程度抑える効果が期待される薬が若干あるだけで、脳血管性認知症に効果がある薬剤は今のところ存在しません。そのため、非薬物療法によって症状を抑えることが主な治療法となります。