神経内科
神経内科とは
神経内科とは脳や脊髄、神経、筋肉の病気をみる内科です。
よく間違えられやすいのが精神科、精神神経科、神経科、心療内科などです。これらの科は精神科の仲間で、おもに気分の変化(うつ病など)、精神的な問題を扱う科です。神経内科はこれらの科と異なり、精神的な問題からではなく、脳や脊髄、神経、筋肉に病気があり、体が不自由になる病気を扱います。
神経内科として扱う症状としては、しびれやめまい、うまく力がはいらない、歩きにくい、ふらつく、しゃべりにくい、頭痛、ものわすれなどたくさんあります。まず、当院で診察させて頂き、その上で骨や関節の病気がしびれや麻痺の原因なら整形外科に、手術などが必要なときは脳神経外科に、精神的なものは精神科にご紹介します。
このようにいろいろな科が関係することもありますが、まずは全身をみれる神経内科を掲げている(当院を含めた)クリニックにかかっていただき、必要であれば他の科にご紹介させて頂く形がよろしいかと思います。
出典:日本神経学会
めまい
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めまいは、からだのバランスを保つ機能に障害が起こると生じます。めまいの感じ方は、「自分のからだが回っている」、「自分のまわりの地球が回っている」、「雲の上を歩くようにふわふわする」、「谷底に引きずり込まれるように感じる」など、さまざまです。 めまいを訴える人の数は、厚生省の国民生活基礎調査によると、約240万人にのぼっています。
からだの平衡をつかさどる器官には三半規管、耳石器、前庭神経、脳幹、視床、大脳皮質があります。このどの場所が障害されてもめまいがおこります。 三半規管は体の動きをとらえる器官で、回転などの動きを鋭敏にキャッチします。三半規管に障害が起こると体が回転するようなめまいをおこします。
耳石器は加速度や重力をとらえる器官です。ここが障害されると、ふわふわするようなめまいをおこします。三半規管と耳石器でキャッチした体の信号は前庭神経で脳幹へ伝えられます。前庭神経が障害されると、強い回転性のめまいがおこります。脳幹には体の位置、平衡を司る神経系が集まっています。ここが障害されると回転するめまいがおこることが多いのです。脳幹からの情報は視床、さらに大脳皮質へ伝えられます。ここの障害ではふわふわするようなめまいを感じることが多いのです。
めまいを大きく分けると、耳から生じるめまいと、脳から生じるめまい、さらに特にご高齢の方に多いめまいの3つに分けることができます。
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- 耳からくるめまい
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内耳にある三半規管の内部はリンパ液で満たされていて、体が動くとリンパ液の流れが変わります。三半規管には3つの半円形の管があり、互いに90度の角度を持っています。そこでどの方向へ体が動いているかを容易にとらえることができます。
耳石器には炭酸カルシウムの小さな結晶がたくさんあって、これが感覚器の上に乗っています。体に重力や遠心力が加わると炭酸カルシウムの結晶が動き、体の傾きや重力、加速度をキャッチすることができます。 三半規管と耳石器からの感覚情報は前庭神経によって脳幹へ伝えられます。これらの器官、すなわち三半規管、耳石器、あるいは前庭神経に障害があるめまいが耳から生じるめまいです。耳から生じるめまいでは、めまいと同時に耳鳴り、難聴、耳閉感があらわれ、まためまいと平行して軽快します。 -
▼ 耳が原因でめまいをおこす疾患にはつぎのようなものがあります。
メニエール病
難聴、耳鳴り、耳閉感などの耳症状とともに、発作的に強い回転性めまいを生じます。
めまいは数分から数時間つづきます。
内耳リンパの異常によります。40歳以降の壮年に発症する疾患であり、高齢初発のめまいはむしろ中枢性疾患を考えます。 -
前庭神経炎
かぜの症状から1~2週間して、とつぜん回転性のめまいで始まります。
食事をすることも、動くこともできませんが、2~3週間ほどで自然に軽快します。
治療は強いめまいに対してめまいを抑えるクスリを使ったり、ステロイド剤を使うこともあります。 -
突発性難聴
聴神経に炎症がおき、とつぜん強い難聴がおこります。
耳鳴りをともなうこともありますが、めまいは比較的軽いものです。 -
前庭神経が圧迫されるためのめまい
加齢によって動脈硬化がおこると動脈が延長し、蛇行します。そのため前庭神経が圧迫を受け、「ごっ、ごっ」という耳鳴りと同時にめまいをおこします。治療には抗痙攣薬(カルバマゼピン)を投与したり、手術で完治します。
- 脳から生じるめまい
- 脳が原因でおこるめまいは、耳鳴りや難聴、耳閉感をともないません。めまいも耳から生じるめまいにくらべると軽いことが多いのです。しかしながら、脳の障害による特徴的な症状があらわれます。たとえば、物が二重に見える、顔や手足がしびれる、力が入らない、手がふるえるなどの症状です。
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▼ 検査
脳にめまいの原因があると疑われる場合には、耳鼻咽喉科でおこなう検査の他に、以下のような検査をおこないます。
神経学的検査
MRI& MRA
脳波
感覚、運動機能、刺激に対する反応をいろいろな方法でしらべます。
その反応によって、脳に原因があるのか、末梢の神経に原因があるのかなど、さらに脳のどこが問題かなどを絞り込むことができます。 -
▼ 脳が原因でめまいをおこす疾患にはつぎのようなものがあります。
脳卒中(脳梗塞、脳出血)
脳卒中によって平衡感覚の経路のどこかが障害を受けると、めまいがおこります。
脳卒中によるめまいの特徴は通常2~3時間、短くても20~30分間はつづくことです。
めまいの症状や程度は梗塞や出血が生じた場所によって異なります。
たとえば脳幹の前庭神経核という、平衡感覚があつまる部分の障害では強い回転性のめまいがおこりますし、大脳皮質の障害では揺れるような、比較的軽度のめまいですみます。
脳卒中によるめまいの治療は、脳卒中そのものに対する治療に準じます。
いずれにせよなるべく速やかに医療機関を受診してください。 -
椎骨脳底動脈循環不全
大動脈から分岐して脳とくに脳幹や小脳へ血流を送るのが椎骨動脈であり、脳底動脈です。
この血管の血流が悪くなるとめまいをおこします。この場合のめまいは20~30秒でおさまることが多いのです。
椎骨動脈は頸椎の中を通っています。そのため、急に後ろをふりむいたり、天井を見上げたり、床を見たりする動作によって血液循環がさまたげられてめまいをおこします。
検査はMRAによって椎骨脳底動脈の変化を調べます。
動脈硬化の危険因子のある人はそのコントロールをおこない、とくに喫煙者は禁煙します。 -
てんかん
てんかんによるめまいは、耳鳴りとともに揺れるようなめまいが15秒ほどつづきます。
めまいは自然に治ることが多いのですが、ときには手のふるえがあらわれたり、全身けいれんにいたることもあります。
てんかんが疑われるときには脳波の検査をします。 -
良性発作性頭位変換性めまい
頭を動かしたときだけに軽い回転性のめまいがおこり、20秒以内に自然におさまるのが特徴です。
この原因は多岐にわたります。過労、睡眠不足、酒の飲み過ぎなどが原因になることもあります。
予防法は急に振り返る、天井を見上げるなどの急な頭の動作を避けます。
- 老人に多いめまい
- お年寄りはめまいをおこしやすくなります。その理由には次のようなものがあげられます。
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平衡感覚が衰える
血圧を調節する能力が衰える
いろいろな病気をかかえている
高血圧症、糖尿病、あるいは動脈硬化症などいろいろの病気がおこってきます。これにたいしてクスリを服用しますが、そのため病気やクスリの副作用によるめまいも頻発してきます。
お年寄りのめまいの特徴は、原因を簡単に明らかにできないことが多いことです。
めまいの感じ方もかならずしも典型的ではありません。回転性のめまいがおこるような病気であっても、揺れるようなめまいとして感じることがあります。このように、診断がむずかしいのがお年寄りのめまいです。 -
▼ 原因
お年寄りのめまいをおこす原因にはいくつもあります。
特に多いのが、起立性低血圧によるめまいはもっとも多いと考えられます。1.起立性低血圧
2.椎骨脳底動脈循環不全
3.脳梗塞・脳出血
4.脱水
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起立性低血圧によるめまい
起立性低血圧とは、座った位置から立ち上がったときに最高血圧が20mmHg以上低下するものを言います。
若い人では急激に血圧が下がると顔が青ざめ、冷や汗が出て倒れてしまうことがありますが、老人では若い人のように激しい反応がおこらず、反応自体が弱くあらわれます。
一方で、血圧が少し下がっただけでもめまいをおこしやすくなります。 -
●血液が脚にたまる
起立性低血圧でもっとも多い原因といえましょう。本来、座った位置から立ち上がると神経の末端からノルエピネフリンという物質が放出されて脚の血管を収縮させます。その結果、血液が脚にたまることを防いでいます。しかしこの反応が衰えてくると、立ち上がったときに血液が脚の方へ流れ、脳に流れる血液が減るために起立性低血圧がおこります。対策としては、急に立ち上がらないこと、立っていてめまいがおこりそうになったら、足踏みをします。弾性ストッキングを使用するのも良いでしょう。 -
●パーキンソン病
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●多発神経炎
末梢神経が障害されて手足の先からしびれが始まります。
血管を支配している神経に障害が及ぶと、立ち上がったときに血管がうまく収縮しなくなります。
そのため脚に血液が流れ込み、血圧が低下します。
多発神経炎はアルコール依存症、糖尿病、腎臓病などが原因でおこりますので、その原因となる病気を治療することがたいせつです。 -
●薬剤による起立性低血圧
クスリの服用による起立性低血圧も多いものです。
とくに血圧を下げる降圧剤、利尿薬、狭心症の治療に使うニトログリセリン、向精神薬などです。 -
暑さによる脱水からおきるめまい
暑さのために汗をかくと体の水分が失われ、脱水状態になります。同時に血液の粘りけが増してきます。
この結果血流がとどこおり、めまいをおこします。
とくにお年寄りはのどの渇きを感じる感覚が鈍くなるので、脱水が生じやすく、周囲の人はいつも注意している必要があります。
脱水を防ぐためにはこまめにお茶などを飲み、入浴や就寝前にもコップに1杯の水を飲みたいものです。
頭痛
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まったく頭痛を経験したことがない人は少ないと思います。
風邪をひいて熱がでた時の頭痛、お酒を飲みすぎた翌朝の二日酔の頭痛などなんらかの頭痛を経験したことがある方がほとんどでしょう。
繰り返しおこる頭痛や、急に激しくおこる頭痛など頭痛にもいろいろあります。
緊急を要するものと、そうでもないものがありますので、当院を含めた神経内科にご相談ください。
頭痛には以下の種類があります
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- 一次性頭痛(慢性頭痛)
- 慢性に頭痛を繰り返す疾患で、明らかな脳病変などを伴わない疾患は機能性頭痛疾患、あるいは一次性頭痛と呼ばれます。
- 二次性頭痛
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これは原因の病気が別にあり、その病気により頭痛がおきているものです。
当院では慢性頭痛と呼ばれる「一次性頭痛」を主に診察させていただきますが、注意が必要なのは特に「二次性頭痛」です。- ・突然の頭痛
- ・今まで経験したことがない頭痛
- ・いつもと様子の違う頭痛
- ・徐々に強くなる頭痛
- ・50歳を過ぎて初めて頭痛を感じたとき
- ・力が入りにくい、しびれる、目が見えにくいなどという症状を伴う頭痛
- ・ガンなどの病気をもっている方の頭痛
- ・熱がある、首が痛い、首が曲げられないなどの症状を伴う頭痛
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▼ お子さんの場合
- ・6ヶ月以内に薬が効かない
- ・歩き方がいつもと違う、動きがいつも違う
- ・親御さんに頭痛の既往(特に片頭痛)がない
- ・意識がおかしい、吐く
- ・寝たり起きたりを繰り返す
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▼ 問診票をダウンロード
当院に頭痛で受診される際は、下に示す問診票を参考にしていただけると幸いです。
HIT-6:頭痛による日常生活への支障度を知ることができます
出典:ADITUS JAPAN
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- 一次性頭痛
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当院で診察させていただきます一次性頭痛(慢性頭痛)について簡単に説明します。
以前から同じような頭痛を繰り返している場合は慢性頭痛で生命の危険はないことが大部分です。
片頭痛や緊張型頭痛が代表的です。
当院を含めた神経内科を受診されるとよいでしょう。
慢性頭痛でも、頭痛が経過と伴に悪化してくるような場合には脳腫瘍や慢性硬膜下血腫などの可能性もありますので、やはり一度神経内科を受診されるのがよいでしょう。
慢性頭痛症の中には難治性のものもありますので、必ずしもすべての頭痛に対して完全に痛みを消してしまえる治療法があるわけではありません。
現在の利用可能な治療薬、治療法を駆使して、頭痛による日常生活・仕事・家事・学業などへの悪影響を最小限にする努力を担当医師と患者さん御自身との共同作業で実施するものと理解していただくのがよいと思います
- 片頭痛
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偏頭痛と書かれる方もいらっしゃいますが、正確には「片頭痛」です。
頭の片側または両側が脈打つようにズキンズキンと痛む病気です。
月に1~2度とか、週に1~2度の頻度で発作的に起こるのが特徴で、いったん痛み出すと寝込んでしまう、仕事が手につかないなど、多くの方が日常生活に支障をきたします。
吐き気や嘔吐を伴うことが多く、また普段はなんでもないような光や音に対して過敏になる、といった随伴症状と呼ばれる症状がみられることもあります。
しかし、痛みがおさまると健康な人と全く同じように生活や行動ができますし、片頭痛自体が命にかかわることはありません。ストレスのある状態を続けたあと、一段落してホッとしたとき(休日など)にも頭痛が起こります。
頭痛は数時間程度のこともあれば、3日間くらい続くこともあります。
また、片頭痛は、痛みの起こる直前に「前兆」を伴うタイプと、伴わないタイプに分類できます。 -
▼ 閃輝暗点
- ・目の前で光がチカチカする
- ・視野の一部に歯車のようなギザギザしたものが現れる
- ・視界が欠ける
一般に5~60分程度続き、それが終わって60分以内に激しい痛みに襲われます。
それ以外の前兆としては、手足がしびれる、しゃべりにくくなる、といった症状などもみられます。
もっとも、前兆を伴わない片頭痛のほうが多く、同じ人でも前兆がいつも現れるわけではありません。
前兆を伴わない片頭痛でも、「なんとなく頭痛がきそうだ」という漠然とした予感を感じることがあります。
具体的には、「だるい」「イライラする」「気分がよくない」「眠気を感じる」と行った状態になります。
そのあとに頭痛が起こるケースです。こうした漠然とした症状については「予兆」とよんで、前兆とは区別しています。
- 緊張型頭痛
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頭痛を感じてらっしゃる方の大部分はこれに当たるのではないでしょうか。
また、この緊張型頭痛と片頭痛の両方を合併している方も多いようです。緊張型頭痛の発生には、身体的・精神的なストレスが複雑に関係していると考えられています。無理な姿勢の維持や長時間のパソコンの使用などによって頭から肩にかけての筋肉が緊張し血流が悪くなると、乳酸などの疲労物質が筋肉にたまり、 これが神経を刺激して痛みを引き起こすと考えられています。
緊張型頭痛は、にぶい痛みが特徴ですが、我慢できないほどではないのが普通です。 数時間~数日の頭痛が反復性におこる場合と、持続的に毎日のように続く場合があります。首や肩のこりを伴うこともあります。嘔吐を伴うことはありません。効果的に休憩をとるなど、ライフスタイルの改善でよくなることもあります。緊張型頭痛は、片頭痛ほどの痛みはないものの、頭が締め付けられているような頭の重い状態が起こります。
片頭痛がストレスから解放されてホッとしたときに起こりやすいのに対して、緊張型頭痛はストレスにより頭や首を囲む筋肉が過剰に緊張して起こる傾向があるようです。多くは肩や首筋のこりや眼精疲労を伴います。 -
▼ 基本的に軽い緊張型頭痛であれば
- ・ストレスを解消する
- ・リラックスする
- ・体操をする(肩こり体操など)
- ・筋肉の緊張をほぐす など
一方片頭痛は、生活習慣の改善はもちろん大切ですが、 それだけで改善が難しい場合は、発作の予防や痛みを抑えるための薬物療法を行うことも重要です。
ですから、両方を合併している人は普段から生活習慣の改善を心がけるようにしてください。
その上で、一人一人の片頭痛の特徴・症状に合わせた薬を正しく飲みましょう。
- 群発頭痛
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群発頭痛の原因については残念ながらまだはっきりとしていません。
副交感神経の刺激により、涙が出る、瞳孔が小さくなる、充血・鼻水・発汗といった症状を伴います。
群発頭痛も片頭痛と同様に発作的に起こる頭痛です。
年に数回から数年に1回くらいの頻度で起こりますが、一度発症すると1~2ヶ月にわたって、ほとんど毎日、 ほぼ同じ時間帯に激しい頭痛におそわれます。じっとしていられず、転げまわる人もいるほどです。
片側の目の奥が強烈に痛むのが特徴で、同じ側の目や鼻に涙・鼻水・鼻づまりなどの症状が現れます。
しびれ
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「しびれ」には、長く正座した後のようにジンジンする異常な感覚の場合と、手や足に力が入りにくい運動麻痺の場合とがあります。感覚の異常だけのこともあれば、運動麻痺だけのこともあります。感覚と運動の障害が同時に起こってくることもあります。
脳から手足を動かす命令を伝える運動神経の経路が病気で侵されると、思うように手足の筋肉に力が入らなくなったり、筋肉がやせ衰えてきたりします。いろいろな病気で感覚神経や運動神経が傷つきます。脳が侵されることもあれば、脊髄が障害されることもあります。脊髄から出て手足の筋肉や皮膚など全身に分布する末梢神経の病気でしびれが起こることもよくあります。侵される部位によって、病気の原因は実に様々です。
内科の病気に伴って「しびれ」が起こることもよくあります。たとえば、糖尿病では末梢神経障害を起こしやすく、脊椎の病気、椎間板ヘルニアや変形性脊椎症でも、脊髄や、脊髄から末梢神経が出るところ(神経根)で圧迫を起こしやすく、よく「しびれ」がみられます。脳卒中でも「しびれ」はよく出ます。 このように「しびれ」の原因は実にさまざまですから、「しびれ」が出たら、安易に放置しないでお近くの神経内科を受診されるのがよいと思います。一般内科の診察に続いて神経の異常を詳しく診察します(神経学的診察といいます)。これで大体どういう病気の可能性があるかわかりますので、その後に必要な検査をします。治療は、内科的な治療で済む場合もあれば、整形外科や脳外科などでの手術が必要になる場合もときにあります。このように内科の病気であることも外科の病気であることもありますから、「しびれ」の場合は最初の診断はひとまず当院を含め最寄りの神経内科にかかるのがよいでしょう。
動きにくい
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「歩きにくい、ふらつき、つっぱり」めまいや脱力のため歩きにくくなる他に、力は入るのに歩きにくいときもあります。
バランスが悪くて歩くとふらふらしてしまうときや足がつっぱってしまって上手く歩けないときなどです。
なにが悪くて歩きにくいのかをみつけることが肝心ですので、当院を含め神経内科で診てもらってください。
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- うまく力がはいらない(脱力)
- 手に力が入らない、足に力が入らないなどの症状があると上手に箸を使えなかったり、ものを持っても落としてしまったり、歩きにくくなったりします。特に、急に体の片側の手足(例えば右の手足など)が同時に動きにくくなったり、顔つきがかわったり、ろれつがまわらないときなどは脳卒中の可能性があるので、なるべく早く当院を含め神経内科を受診されるようお勧めします(なるべくCT・MRIなどの検査が可能な施設へ早く受診された方が良いです)。早いほど治療が早くはじめられ、後遺症が少なくて済みます。
- かってに手足や体が動いてしまう、ふるえ(不随意運動)
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勝手に手足や体が動いてしまい、自分では止められないことがあります。いろいろな動き方があり、種類によって原因も違います。
また手のふるえはよくみられる症状ですが、中にはパーキンソン病の始まりであることもありますので、当院を含め神経内科を受診して診てもらいましょう。出典:日本神経学会
認知症
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脳は、私たちのほとんどあらゆる活動をコントロールしている司令塔です。
それがうまく働かなければ、精神活動も身体活動もスムーズに運ばなくなります。認知症とは、いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったためにさまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態(およそ6ヵ月以上継続)を指します。
認知症を引き起こす病気のうち、もっとも多いのは、脳の神経細胞がゆっくりと死んでいく「変性疾患」と呼ばれる病気です。
アルツハイマー病、前頭・側頭型認知症、レビー小体病などがこの「変性疾患」にあたります。続いて多いのが、脳梗塞、脳出血、脳動脈硬化などのために、神経の細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなり、その結果その部分の神経細胞が死んだり、神経のネットワークが壊れてしまう脳血管性認知症です。
アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)は、男性より女性に多くみられ、脳の機能の一部が萎縮していきます。脳血管性認知症は比較的男性に多くみられ、全体的な記憶障害ではなく、一部の記憶は保たれている「まだら認知症」が特徴です。症状は段階的に、アルツハイマー型よりも早く進むことがあります。かつて日本では、脳血管性認知症が多かったのですが、このタイプは減ってきています。また、アルツハイマー型に血管性認知症が合併している患者さんも多くみられます。初期は、加齢による単なる物忘れに見えることが多いでしょう。しかし、憂うつ、外出をいやがる、気力がなくなった、被害妄想がある、話が通じなくなった、外出すると迷子になる、お金の勘定ができなくなったなどのサインが出てきたときには、当院を含めた専門機関に相談してみましょう。
認知症ほどではないけれど、正常な「もの忘れ」よりも記憶などの能力が低下している「軽度認知障害」が最近注目されています。軽度認知障害のすべてが認知症になるわけではありませんが、この段階から治療を開始することで、認知症の進行を遅らせるなどの効果が期待されています。
記憶・学習能力などにみられるサイン
- 正常なもの忘れ
- 認知症によるもの忘れ
- もの忘れの範囲
- 出来事などの一部を忘れる
(例:何を食べたか思い出せない) - 出来事などのすべてを忘れる
(例:食べたことそのものを忘れる)
- 自覚
- もの忘れに気づき、思い出そうとする
- もの忘れに気づかない
- 学習能力
- 新しいことを覚えることが出来る
- 新しいことを覚えられない
- 日常生活
- あまり支障がない
- 支障を来す
- 幻想・妄想
- ない
- 起こることがある
- 人格
- 変化はない
- 変化する(暴言や暴力を振るうようになる、起こりやすい、何事にも無関心になる)
脳の細胞が壊れることによって直接起こる症状が記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下、実行機能の低下など中核症状と呼ばれるものです。これらの中核症状のため周囲で起こっている現実を正しく認識できなくなります。
本人がもともと持っている性格、環境、人間関係などさまざまな要因がからみ合って、うつ状態や妄想のような精神症状や、日常生活への適応を困難にする行動上の問題が起こってきます。これらを行動・心理症状と呼ぶことがあります。
このほか、認知症にはその原因となる病気によって多少の違いはあるものの、さまざまな身体的な症状もでてきます。とくに脳血管性認知症の一部では、早い時期から麻痺などの身体症状が合併することもあります。
アルツハイマー型認知症でも、進行すると歩行が拙くなり、終末期まで進行すれば寝たきりになってしまう人も少なくありません。
- 中核症状
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記憶障害
人間には、目や耳が捕らえたたくさんの情報の中から、関心のあるものを一時的に捕らえておく器官(海馬、仮にイソギンチャクと呼ぶ)と、重要な情報を頭の中に長期に保存する「記憶の壺」が脳の中にあると考えてください。
いったん「記憶の壺」に入れば、普段は思い出さなくても、必要なときに必要な情報を取りだすことができます。しかし、年をとるとイソギンチャクの力が衰え、一度にたくさんの情報を捕まえておくことができなくなり、捕まえても、「壺」に移すのに手間取るようになります。「壺」の中から必要な情報を探しだすことも、ときどき失敗します。
年をとってもの覚えが悪くなったり、ど忘れが増えるのはこのためです。それでもイソギンチャクの足はそれなりに機能しているので、二度三度と繰り返しているうち、大事な情報は「壺」に納まります。
ところが、認知症になると、イソギンチャクの足が病的に衰えてしまうため「壺」に納めることができなくなります。
新しいことを記憶できずに、さきほど聞いたことさえ思い出せないのです。
さらに、病気が進行すれば、「壺」が溶け始め、覚えていたはずの記憶も失われていきます。 -
見当識(けんとうしき)障害
見当識障害は、記憶障害と並んで早くから現われる障害です。
見当識とは、現在の年月や時刻、自分がどこにいるかなど基本的な状況を把握することをいいます。
時間に関する見当識が薄らぐと、長時間待つとか、予定に合わせて準備することができなくなります。何回も念を押しておいた外出の時刻に準備ができなかったりします。
もう少し進むと、時間感覚だけでなく日付や季節、年次におよび、何回も今日は何日かと質問する、季節感のない服を着る、自分の年がわからないなどが起こります。
さらに、過去に獲得した記憶を失うという症状まで進行すると、自分の年齢や人の生死に関する記憶がなくなり周囲の人との関係がわからなくなります。80歳の人が、30歳代以降の記憶が薄れてしまい、50歳の娘に対し、姉さん、叔母さんと呼んで家族を混乱させます。
また、とっくに亡くなった母親が心配しているからと、遠く離れた郷里の実家に歩いて帰ろうとすることもあります。 -
理解・判断力の障害
認知症になると、ものを考えることにも障害が起こります。具体的な現象では次の変化が起こります。
・考えるスピードが遅くなる
・二つ以上のことが重なるとうまく処理できなくなる
一度に処理できる情報の量が減ります。
念を押そうと思って長々と説明すると、ますます混乱します。
・些細な変化、いつもと違うできごとで混乱を来しやすくなる
お葬式での不自然な行動や、パートナーの入院で混乱してしまったことをきっかけに認知症が発覚する場合があります。
・観念的な事柄と、現実的、具体的なことがらが結びつかなくなる
「倹約は大切」と言いながらセールスマンの口車にのって高価な羽布団を何組も買ってしまうということが起こります。
また、目に見えないメカニズムが理解できなくなるので、自動販売機や交通機関の自動改札、銀行のATMなどの前ではまごまごしてしまいます。
全自動の洗濯機、火が目に見えないIHコンロなどもうまく使えなくなります。 -
実行機能障害
スーパーマーケットで大根を見て、健康な人は冷蔵庫にあった油揚げと一緒にみそ汁を作ろうと考えます。
認知症になると冷蔵庫の油揚げのことはすっかり忘れて、大根といっしょに油揚げを買ってしまいます。ところが、あとになっていざ夕食の準備にとりかかると、さっき買ってきた大根も油揚げも頭から消えています。冷蔵庫を開けて目に入った別の野菜でみそ汁を作り、冷蔵庫に油揚げが二つと大根が残ります。
こういうことが幾度となく起こり冷蔵庫には同じ食材が並びます。認知症の人にとっては、ご飯を炊き、同時進行でおかずを作るのは至難の業です。でも、認知症の人は「なにもできない」わけではありません。献立を考えたり、料理を平行して進めることはうまくできませんが、だれかが、全体に目を配りつつ対応すれば一つひとつの調理の作業は上手にできます。
「今日のみそ汁は、大根と油揚げだよね」の一言で油揚げが冷蔵庫にたまることはありません。「炊飯器のスイッチはそろそろ入れた方が良いかな?」ときいてくれる人がいれば、今までどおり、食事の準備ができます。
こういう援助は根気がいるし疲れますが、認知症の人にとっては必要な支援です。こうした手助けをしてくれる人がいれば、その先は自分でできるということがたくさんあります。 -
感情表現の変化
通常、自分の感情を表現した場合の周囲のリアクションは想像がつきます。
私たちが育ってきた文化や環境、周囲の個性を学習して記憶しているからです。さらに、相手が知っている人なら、かなり確実に予測できます。認知症の人は、ときとして周囲の人が予測しない、思いがけない感情の反応を示します。
それは認知症による記憶障害や、見当識障害、理解・判断の障害のため、周囲からの刺激や情報に対して正しい解釈ができなくなっているからです。たとえば「そんな馬鹿な!」という言葉を、認知症の人はその場の状況を読めずに自分が「馬鹿」と言われたと解釈して、相手に対し怒りの感情をぶつけてしまいます。怒られた人はびっくりしてしまいますが、認知症の人の行動がわかっていれば、少なくとも本人にとっては不自然な感情表現ではないことが理解できます。
- 行動・心理症状
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認知症の初期にうつ状態を示すことがありますが、原因には「もの忘れなど認知機能の低下を自覚し、将来を悲観してうつ状態になる」という考え方と、「元気や、やる気がでないこと自体が脳の細胞が死んでしまった結果である」という考え方があります。
認知症の症状が出てくると、周囲が気づく前から、本人は漠然と気がついています。
これまでテキパキできた料理も手順が悪く、時間がかかるうえに、うまくできなくなります。
苦労して作っても、「これまでと味が違う」等といわれ自信を失います。
客が来たら出前をとることになり、日頃の食事も出来合いのお惣菜ですますようになります。家の整理、整頓や掃除も同じです。
片づけるつもりが散らかって収拾がつかなくなり、室内はごちゃごちゃ、大事なものはどこかに行ってしまうことになります。
意欲や気力が減退したように見えるので、うつ病とよく間違えられます。周囲からだらしなくなったと思われることもあるようです。
すべてが面倒で、以前はおもしろかったことでも、興味がわかないと感じる場合も多いようです。将来の望みを失ってうつ状態になる場合も能力の低下を強く自覚し、密かに認知症に関する本で調べたりしている人もいます。
そして自ら認知症を疑って将来に望みをなくし、うつ状態になることもあります。
周囲の対応としては、本人に恥をかかせないようにすることが大事です。
「できることをやってもらう」ことは必要ですが、できたはずのことができなくなるという経験をさせ、本人の自信をなくすという結果になったのでは逆効果です。
自分の能力が低下してしまったことを再認識させるようなことはますます自信を失わせます。
例えば、昔、書道がうまかったからといって書道を強要すると、本人にとってはヘタになった文字を見るのは辛いと考えることもあるのです。それとなく手助けをして成功体験に結びつけることができれば少しでも笑顔が戻るようになるでしょう。うつ状態にあるときには周囲からの「がんばれ」が負担になるので注意が必要です。
幻覚、妄想、抑うつ、夜間せん妄などの精神症状についてどう理解したらいいでしょう。なくしたものを盗まれたと思いこむ、「もの盗られ妄想」を例に考えてみましょう。 大事なものをしまい忘れるのは認知症の人なら多くの人に起こる中核症状です。いつものしまい場所ではなく、違う場所にしまいこみ、すっかり忘れたために「通帳がなくなった!」と始まります。
人に頼らず、自立して生きていきたいという気持ちの強い人では、自分が忘れるわけなどない(忘れたなどということが受け入れられない)と思うあまり、そばで世話をしてくれている人が盗んだという「もの盗られ妄想」がしばしばみられます。これは、もの忘れという中核症状に、自立心が強いという性格や、心ならずも家族に迷惑をかけているという状況が影響して起こる行動・心理症状です。
なくし物が出てくればそれでおさまる妄想ですから、周囲の人はあまり深刻にならず、疑われている介護者が疲弊しないよう心理的な支援をすることが大事です。
こういう妄想は、時期が来れば自然に見られなくなります。妄想的になりやすい素質を持った人にストレスがかかったときに、単純なもの盗られ妄想から「嫁は家の財産をねらっている」とか「家を乗っ取られる」といった妄想に発展します。これには「妄想的になりやすい」という素質が深く関与しているので、妄想を治療する抗精神病薬が効果を上げることが少なくありません。
単純な「もの盗られ妄想」にしては訴えがオーバーだったり執拗だったりするときは、妄想の対象となっている人を守るためにも、本人の症状を軽減するためにも、まずは受診していただき相談していただくことが重要です。
自分のことや周囲で起こっていることが正しく把握できなくなると、行動がちぐはぐになり、日常生活にも支障が出てきます。「徘徊」を例に原因を探ってみます。- ・(1)図書館で数時間過ごすのが日課のAさん。ある冬の日、いつもより2時間遅く出かけたため、暗くなった帰り路、道に迷い夜遅く疲れ果てた姿で自宅に戻ってきた。
- ・(2)Bさんは、日曜日の朝、通っている教会に行こうと自宅を出たが迷子になり、昼過ぎ、とぼとぼと家に戻った。
- ・(3)Cさんは、夕方になると、遠くの郷里に帰ると言ってたびたび家を出て行こうとするが、ある日、介護者が目を離した隙に出て行き、行方不明になり、翌日、思いがけない場所で保護された。
- ・(4)Dさんは、妻と買い物の途中、行方不明になった。2日後に遠く離れた町で保護された。
- ・(5)Eさんは、家の中でも外でも、じっとしていないで歩き続ける。人や物を押しのけ、突き飛ばしてとにかく歩く。
(1)(2)の場合は場所の見当識障害が原因です。Aさんは昼間、風景が見えれば大丈夫なので明るいうちに帰れるように工夫すれば一人で活動できます。Bさんはもう少し症状が進んでおり、送り迎えのボランティアが必要かも知れません。
(3)のCさんの症状は、脳の活性が徐々に下がってくる夕方に、場所や時間の見当識障害が深まるようです。
昼寝などで夕方の意識をはっきりさせ、場合によっては薬を使います。
(4)のDさん、(5)のEさんの場合は、認知症が進行して常に誰かが見ていないといけません。介護者の支援が必要です。
「徘徊」といってしまえば終わりですが、原因を想像すれば対応策も自然にでてきます。
- 治療法
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早期受診、早期診断、早期治療は非常に重要です。原因が正常庄水頭症とか、脳腫瘍、慢性硬膜下血腫などの場合、脳外科的な処置で劇的に良くなる場合もあります。
甲状腺ホルモンの異常の場合は、内科的な治療で良くなります。薬の不適切な使用が原因で認知症のような症状がでた場合は、薬をやめるか調整すれば回復します。
ところが、こうした状態のまま長期間放置すると、脳の細胞が死んだり、恒久的な機能不全に陥って回復が不可能になります。一日も早く受診することが重要です。
アルツハイマー病では、薬で進行を遅らせることができ、早く使い始めると健康な時間を長くすることができます。
病気が理解できる時点で受診し、少しずつ理解を深めていけば生活上の障害を軽減でき、その後のトラブルを減らすことも可能です。
障害の軽いうちに障害が重くなったときの後見人を自分で決めておく(任意後見制度)等の準備や手配をしておけば、認知症であっても自分らしい生き方を全うすることが可能です。
早期に診断を受けても、できるだけ自分の力で生きていきたいと思う人、あるいは、頼るべき人もなく、自分で生きて行かざるを得ない人も少なくありません。
そういうときは、日常生活自立支援事業や新しい成年後見制度(補助や任意後見)を活用しましょう。
かかりつけ医や相談に乗ってもらうケアマネジャーを持ち、これらの制度を十分利用すればかなり進行するまで自分の意思に沿った生活をすることができます。
終末医療や介護の方針については、信頼できるだれかに任せなければならないので自分の回りにいる人たちと十分コミュニケーションを保ち、自分の生き方や考え方を理解してもらいましょう。
本人に代わって意思決定を代行するときは、本人のこれまでの人生、価値観、現在の状況、医学的な現状の評価と予後の見通しなどを参考に、決定をしなければなりません。
認知症を完全に治す治療法はまだありません。そこでできるだけ症状を軽くして、進行の速度を遅らせることが現在の治療目的となります。
治療法には薬物療法と非薬物療法があります。このうち薬物療法は、アルツハイマー病の中核症状の進行をある程度抑える効果が期待される薬が若干あるだけで、脳血管性認知症に効果がある薬剤は今のところ存在しません。
そのため、非薬物療法によって症状を抑えることが主な治療法となります。 -
▼ 中核症状への治療
アルツハイマー病では、塩酸ドネペジル(商品名:アリセプト®)、ガランタミン(商品名:レミニール®)、リバスチグミン(商品名:イクセロン®、リバスタッチ®)などの抗コリンエステラーゼ阻害薬に中核症状の一時的な改善効果が認められています。
この効果は一時的で、進行を完全に抑えるものではありません。進行を遅らせるだけですので、できるだけ早くから治療を開始して、少しでも軽症の段階にとどめるようにすることが大切です。
周辺症状は中核症状よりも介護者の強い苦痛になることが多く、効果的な薬をつかって症状をおさえたくなるのですが、かつて周辺症状に使われていた薬の中には、認知症の症状をかえって悪化させるものがあるので、薬物療法には慎重を要します。
まずは薬に頼らず、患者さんを刺激しない(例:つじつまの合わない話を患者さんがしても否定したり、叱ったりしないで耳を傾ける態度をとる)、規則正しい生活をおくるようにこころがける、環境を急激に変えないようにする、などを基本とします。出典:認知症サポーター養成講座標準教材(特定非営利活動法人地域ケア政策ネットワーク 全国キャラバンメイト連絡協議会作成)
出典:「家族が認知症と診断されたら読む本」(朝田隆 著 日東書院)
出典:厚生労働書
検査の流れ
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1.認知症かどうか
まずは、患者本人、ご家族の方に問診をさせていただき、状況・病状を確認します。
(ご家族の方の問診が大事になりますので、必ずご一緒にご来院してください。)
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2.認知症であれば治癒しうる認知症を除外します
甲状腺疾患等の内分泌疾患の鑑別のために血液検査、正常圧水頭症等の脳神経外科的な疾患の鑑別のために頭部CT検査等の検査を予定します。
(頭部CT検査は他施設に依頼させていただきます。)
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3.治癒しうる認知症でなければどの認知症疾患が最も考えられるか検討します
Mini-Mental State Examination(MMSE)、長谷川式簡易知能評価スケール改訂版 (HDS-R)、前頭葉評価バッテリー (Frontal Assessment Battery ; FAB)、レビースコア、ピックスコア等の評価法にて評価します。
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4.薬物療法の選択とご家族へのアドバイス
ご家族へのアドバイスをさせていただきます。
パーキンソン病
- 中年以降の方に多く、なにもしていないのに手がふるえていたり、歩くときに前屈みになって、歩幅が狭く、手の振りがなくなり、顔の表情もかたくなるような病気です。
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- このような症状がありましたら、ご相談ください
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- ・手足のふるえ(振戦)
- ・手足のこわばり(固縮)
- ・動作が緩慢(寡動、無動)
- ・転びやすくなる(姿勢反射障害)
片側の症状から始まり、他の部分へ進行する特徴があります。その他に、便秘や立ちくらみ(起立性低血圧)などの自律神経症状、睡眠障害、気持ちがふさぎこむ(抑うつ)などの精神症状が認められます。具体的には、じっとしている時に片側の手や足がふるえる(安静時振戦)、表情が乏しく抑揚の無い声になる、関節が硬く引っ掛かりを持つ(歯車様固縮)、立ち姿が少し前屈みで歩き方が小刻みである、歩く際に手を振らない、歩き始めや途中ですくむと次の一歩がなかなか出ない、身体がどちらかに傾く、字が小さくなる、等が運動症状として代表的です。精神症状には、気持ちの落ち込み、意欲、自発性の低下、夜間の不眠、認知の問題が知られています。自律神経症状には、よだれが多くなる、顔が脂ぎってくる、トイレが近くなる、汗が多くなる、インポテンツ、手足のむくみ、などの訴えが挙げられます。また、身体の痛みが起こる事もあります。最近、これら運動に異常が現れるかなり前から、便秘を訴えていた人が多かったことがわかってきました。もちろん便秘がちなひとすべてが、パーキンソン病になるわけではないのですが、50歳代から70歳ぐらいまでの男性で、その後パーキンソン病になる人は3~4倍といった報告もあります。
さらに「匂い」の低下も注目されています。ふつう「匂いがわかりにくくなる」と訴える人は少ないのですが、「食事がおいしくない」や「味がにぶった」と訴えるお年寄がいます。お年寄りは匂いの問題を、食事がおいしくないとか、味がにぶったとして感じ表現するようです。 その他、うつ症状の人や睡眠中の行動異常などが、パーキンソン病との関係で注目されています。ここで述べた、便秘、匂いを感じにくくなる、うつ症状、睡眠時の行動異常などは、パーキンソン病になった方の生活歴を、振り返って調べた時に目立った項目です。
症状がゆっくり進行する為に、気が付かない事や別の病気と考えられている場合もありますし、別の病気の治療薬の副作用で起こる良く似た症状である場合もあります。症状があった場合は、正しい診断を受ける為に、当院を含め神経内科に受診される事をお勧めします。パーキンソン病でみられる症状は他の病気でも認められる事があります。パーキンソン症候群と呼び、神経の変性疾患と呼ばれる難病や脳梗塞の部分症状、水頭症や脳炎の後遺症、クスリの副作用など様々が原因がある事が知られています。症状の程度や範囲、進み方などで判断していきますが、こうした病気を区別する為に、CT検査、MRI検査、核医学検査などの画像診断が行われる場合があります(必要があればすぐに施行可能な施設へご紹介します)。
パーキンソン病についてわかりやすくいろいろな情報が載っているページがありますので、ご参考にしてください。
(株) 住友ファーマ 健康情報サイト パーキンソン病ステーション
出典:日本神経学会