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認知症

Dementia

認知症dementia

診療の流れ

1.認知症かどうか
まずは、患者本人、ご家族の方に問診をさせていただき、状況・病状を確認します。(ご家族の方の問診が大事になりますので、必ずご一緒にご来院してください。)
2.認知症であれば治癒しうる認知症を除外します
甲状腺疾患等の内分泌疾患の鑑別のために血液検査、正常圧水頭症等の脳神経外科的な疾患の鑑別のために頭部CT検査等の検査を予定します。(頭部CT検査は他施設に依頼させていただきます。)
3.治癒しうる認知症でなければどの認知症疾患が最も考えられるか検討します
Mini-Mental State Examination (MMSE)、長谷川式簡易知能評価スケール改訂版 (HDS-R)、前頭葉評価バッテリー (Frontal Assessment Battery ; FAB)、レビースコア、ピックスコア等の評価法にて評価します。
4.薬物療法の選択とご家族へのアドバイス
ご家族へのアドバイスをさせていただきます。

認知症とは

認知症

脳は、私たちのほとんどあらゆる活動をコントロールしている司令塔です。それがうまく働かなければ、精神活動も身体活動もスムーズに運ばなくなります。
認知症とは、いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったためにさまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態(およそ6ヵ月以上継続)を指します。 認知症を引き起こす病気のうち、もっとも多いのは、脳の神経細胞がゆっくりと死んでいく「変性疾患」と呼ばれる病気です。アルツハイマー病、前頭・側頭型認知症、レビー小体病などがこの「変性疾患」にあたります。続いて多いのが、脳梗塞、脳出血、脳動脈硬化などのために、神経の細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなり、その結果その部分の神経細胞が死んだり、神経のネットワークが壊れてしまう脳血管性認知症です。

アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)は、男性より女性に多くみられ、脳の機能の一部が萎縮していきます。脳血管性認知症は比較的男性に多くみられ、全体的な記憶障害ではなく、一部の記憶は保たれている「まだら認知症」が特徴です。症状は段階的に、アルツハイマー型よりも早く進むことがあります。かつて日本では、脳血管性認知症が多かったのですが、このタイプは減ってきています。また、アルツハイマー型に血管性認知症が合併している患者さんも多くみられます。
初期は、加齢による単なる物忘れに見えることが多いでしょう。しかし、憂うつ、外出をいやがる、気力がなくなった、被害妄想がある、話が通じなくなった、外出すると迷子になる、お金の勘定ができなくなったなどのサインが出てきたときには、当院を含めた専門機関に相談してみましょう。

認知症ほどではないけれど、正常な「もの忘れ」よりも記憶などの能力が低下している「軽度認知障害」が最近注目されています。軽度認知障害のすべてが認知症になるわけではありませんが、この段階から治療を開始することで、認知症の進行を遅らせるなどの効果が期待されています。

認知症ではなさそうだと思っても、もの忘れの程度がほかの同年齢の人に比べてやや強いと感じたら、念のために受診することが早期発見・早期治療につながることになります。もの忘れには、正常なものと認知症をうたがえるものがあります。正常なもの忘れと認知症によるもの忘れの違いの区別ができればよいのですが、現実にはなかなか難しいものです。これが全てではありませんが、認知症に気づくためには、次のような目安が役立ちます。

  • もの忘れの為に日常生活に支障をきたしているか
  • 日常生活で重要ではないこと(芸能人の名前や昔読んだ本の題名など)を思い出せないのは正常の範囲内ですが、仕事の約束や毎日通っている道で迷うなどの場合は認知症のサインかもしれません。
  • 本人が忘れっぽくなったことを自覚しているか
  • 自分でもの忘れの自覚がある場合は正常の範囲内ですが、もの忘れをしていることに気づかず、話の中でつじつまを合わせようとするようになるのは認知症のサインかもしれません。
  • もの忘れの範囲は全体か? 経験の一部を忘れるのは正常の範囲内ですが、経験全体を忘れるのは認知症のサインかもしれません。

記憶・学習能力などにみられるサイン

  正常なもの忘れ 認知症によるもの忘れ
もの忘れの範囲 出来事などの一部を忘れる
(例:何を食べたか思い出せない)
出来事などのすべてを忘れる
(例:食べたことそのものを忘れる)
自覚 もの忘れに気づき、思い出そうとする もの忘れに気づかない
学習能力 新しいことを覚えることが出来る 新しいことを覚えられない
日常生活 あまり支障がない 支障を来す
幻想・
妄想
ない 起こることがある
人格 変化はない 変化する
(暴言や暴力を振るうようになる、起こりやすい、何事にも無関心になる)

軽度認知障害の特徴としては、上述してますが、下記の4つが挙げられます。

  • ほかの同年代の人に比べて、もの忘れの程度が強い
  • もの忘れが多いという自覚がある
  • 日常生活にはそれほど大きな支障はきたしていない
  • もの忘れがなくても、認知機能の障害が1つある

(この場合の認知機能とは、失語・失認・失行・実行機能のことです。)

  • 失語:言葉の障害(言葉が理解できない、言おうとした言葉を言うことができない、など)
  • 失認:対象を正しく認識できない(知り合いの顔、色、大小などを認識できない、など)
  • 失行:くわえたタバコにライターの火をつけられない、服を着ることができない、茶葉とお湯と急須を使ってお茶を入れることができない、など
  • 実行機能の障害:計画をたててその計画通りに実行していくなどができない

脳の細胞が壊れることによって直接起こる症状が記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下、実行機能の低下など中核症状と呼ばれるものです。これらの中核症状のため周囲で起こっている現実を正しく認識できなくなります。本人がもともと持っている性格、環境、人間関係などさまざまな要因がからみ合って、うつ状態や妄想のような精神症状や、日常生活への適応を困難にする行動上の問題が起こってきます。これらを行動・心理症状と呼ぶことがあります。このほか、認知症にはその原因となる病気によって多少の違いはあるものの、さまざまな身体的な症状もでてきます。とくに脳血管性認知症の一部では、早い時期から麻痺などの身体症状が合併することもあります。アルツハイマー型認知症でも、進行すると歩行が拙くなり、終末期まで進行すれば寝たきりになってしまう人も少なくありません。

中核症状

1.記憶障害

人間には、目や耳が捕らえたたくさんの情報の中から、関心のあるものを一時的に捕らえておく器官(海馬、仮にイソギンチャクと呼ぶ)と、重要な情報を頭の中に長期に保存する「記憶の壺」が脳の中にあると考えてください。いったん「記憶の壺」に入れば、普段は思い出さなくても、必要なときに必要な情報を取りだすことができます。
しかし、年をとるとイソギンチャクの力が衰え、一度にたくさんの情報を捕まえておくことができなくなり、捕まえても、「壺」に移すのに手間取るようになります。「壺」の中から必要な情報を探しだすことも、ときどき失敗します。年をとってもの覚えが悪くなったり、ど忘れが増えるのはこのためです。それでもイソギンチャクの足はそれなりに機能しているので、二度三度と繰り返しているうち、大事な情報は「壺」に納まります。
ところが、認知症になると、イソギンチャクの足が病的に衰えてしまうため「壺」に納めることができなくなります。新しいことを記憶できずに、さきほど聞いたことさえ思い出せないのです。さらに、病気が進行すれば、「壺」が溶け始め、覚えていたはずの記憶も失われていきます。

2.見当識(けんとうしき)障害

見当識障害は、記憶障害と並んで早くから現われる障害です。
見当識とは、現在の年月や時刻、自分がどこにいるかなど基本的な状況を把握することをいいます。
時間に関する見当識が薄らぐと、長時間待つとか、予定に合わせて準備することができなくなります。何回も念を押しておいた外出の時刻に準備ができなかったりします。もう少し進むと、時間感覚だけでなく日付や季節、年次におよび、何回も今日は何日かと質問する、季節感のない服を着る、自分の年がわからないなどが起こります。
また、初めは方向感覚が薄らいでも、周囲の景色をヒントに道を間違えないで歩くことができますが、暗くてヒントがなくなると迷子になります。進行すると、近所で迷子になったり、夜、自宅のお手洗いの場所がわからなくなったりします。また、とうてい歩いて行けそうにない距離を歩いて出かけようとします。
さらに、過去に獲得した記憶を失うという症状まで進行すると、自分の年齢や人の生死に関する記憶がなくなり周囲の人との関係がわからなくなります。80歳の人が、30歳代以降の記憶が薄れてしまい、50歳の娘に対し、姉さん、叔母さんと呼んで家族を混乱させます。また、とっくに亡くなった母親が心配しているからと、遠く離れた郷里の実家に歩いて帰ろうとすることもあります。

3.理解・判断力の障害

認知症になると、ものを考えることにも障害が起こります。具体的な現象では次の変化が起こります。

考えるスピードが遅くなる
逆の見方をするなら、時間をかければ自分なりの結論に至ることができます。急がせないことが大切です。
二つ以上のことが重なるとうまく処理できなくなる
一度に処理できる情報の量が減ります。念を押そうと思って長々と説明すると、ますます混乱します。必要な話はシンプルに表現することが重要です。
些細な変化、いつもと違うできごとで混乱を来しやすくなる
お葬式での不自然な行動や、パートナーの入院で混乱してしまったことをきっかけに認知症が発覚する場合があります。予想外のことが起こったとき、補い守ってくれる人がいれば日常生活は継続できます。
観念的な事柄と、現実的、具体的なことがらが結びつかなくなる
「倹約は大切」と言いながらセールスマンの口車にのって高価な羽布団を何組も買ってしまうということが起こります。また、目に見えないメカニズムが理解できなくなるので、自動販売機や交通機関の自動改札、銀行のATMなどの前ではまごまごしてしまいます。全自動の洗濯機、火が目に見えないIHコンロなどもうまく使えなくなります。
4.実行機能障害

スーパーマーケットで大根を見て、健康な人は冷蔵庫にあった油揚げと一緒にみそ汁を作ろうと考えます。認知症になると冷蔵庫の油揚げのことはすっかり忘れて、大根といっしょに油揚げを買ってしまいます。ところが、あとになっていざ夕食の準備にとりかかると、さっき買ってきた大根も油揚げも頭から消えています。冷蔵庫を開けて目に入った別の野菜でみそ汁を作り、冷蔵庫に油揚げが二つと大根が残ります。こういうことが幾度となく起こり冷蔵庫には同じ食材が並びます。認知症の人にとっては、ご飯を炊き、同時進行でおかずを作るのは至難の業です。健康な人は頭の中で計画を立て、予想外の変化にも適切に対応してスムーズに進めることができます。認知症になると計画を立てたり対応したりできなくなり、日常生活がうまく進まなくなります。でも、認知症の人は「なにもできない」わけではありません。献立を考えたり、料理を平行して進めることはうまくできませんが、だれかが、全体に目を配りつつ対応すれば一つひとつの調理の作業は上手にできます。「今日のみそ汁は、大根と油揚げだよね」の一言で油揚げが冷蔵庫にたまることはありません。「炊飯器のスイッチはそろそろ入れた方が良いかな?」ときいてくれる人がいれば、今までどおり、食事の準備ができます。こういう援助は根気がいるし疲れますが、認知症の人にとっては必要な支援です。こうした手助けをしてくれる人がいれば、その先は自分でできるということがたくさんあります。

5.感情表現の変化

通常、自分の感情を表現した場合の周囲のリアクションは想像がつきます。私たちが育ってきた文化や環境、周囲の個性を学習して記憶しているからです。さらに、相手が知っている人なら、かなり確実に予測できます。認知症の人は、ときとして周囲の人が予測しない、思いがけない感情の反応を示します。それは認知症による記憶障害や、見当識障害、理解・判断の障害のため、周囲からの刺激や情報に対して正しい解釈ができなくなっているからです。たとえば「そんな馬鹿な!」という言葉を、認知症の人はその場の状況を読めずに自分が「馬鹿」と言われたと解釈して、相手に対し怒りの感情をぶつけてしまいます。怒られた人はびっくりしてしまいますが、認知症の人の行動がわかっていれば、少なくとも本人にとっては不自然な感情表現ではないことが理解できます。

行動・心理症状

認知症の初期にうつ状態を示すことがありますが、原因には「もの忘れなど認知機能の低下を自覚し、将来を悲観してうつ状態になる」という考え方と、「元気や、やる気がでないこと自体が脳の細胞が死んでしまった結果である」という考え方があります。認知症の症状が出てくると、周囲が気づく前から、本人は漠然と気がついています。これまでテキパキできた料理も手順が悪く、時間がかかるうえに、うまくできなくなります。苦労して作っても、「これまでと味が違う」等といわれ自信を失います。客が来たら出前をとることになり、日頃の食事も出来合いのお惣菜ですますようになります。家の整理、整頓や掃除も同じです。片づけるつもりが散らかって収拾がつかなくなり、室内はごちゃごちゃ、大事なものはどこかに行ってしまうことになります。意欲や気力が減退したように見えるので、うつ病とよく間違えられます。周囲からだらしなくなったと思われることもあるようです。すべてが面倒で、以前はおもしろかったことでも、興味がわかないと感じる場合も多いようです。将来の望みを失ってうつ状態になる場合も能力の低下を強く自覚し、密かに認知症に関する本で調べたりしている人もいます。そして自ら認知症を疑って将来に望みをなくし、うつ状態になることもあります。

周囲の対応としては、本人に恥をかかせないようにすることが大事です。「できることをやってもらう」ことは必要ですが、できたはずのことができなくなるという経験をさせ、本人の自信をなくすという結果になったのでは逆効果です。自分の能力が低下してしまったことを再認識させるようなことはますます自信を失わせます。例えば、昔、書道がうまかったからといって書道を強要すると、本人にとってはヘタになった文字を見るのは辛いと考えることもあるのです。それとなく手助けをして成功体験に結びつけることができれば少しでも笑顔が戻るようになるでしょう。うつ状態にあるときには周囲からの「がんばれ」が負担になるので注意が必要です。

幻覚、妄想、抑うつ、夜間せん妄などの精神症状についてどう理解したらいいでしょう。なくしたものを盗まれたと思いこむ、「もの盗られ妄想」を例に考えてみましょう。 大事なものをしまい忘れるのは認知症の人なら多くの人に起こる中核症状です。いつものしまい場所ではなく、違う場所にしまいこみ、すっかり忘れたために「通帳がなくなった!」と始まります。人に頼らず、自立して生きていきたいという気持ちの強い人では、自分が忘れるわけなどない(忘れたなどということが受け入れられない)と思うあまり、そばで世話をしてくれている人が盗んだという「もの盗られ妄想」がしばしばみられます。これは、もの忘れという中核症状に、自立心が強いという性格や、心ならずも家族に迷惑をかけているという状況が影響して起こる行動・心理症状です。なくし物が出てくればそれでおさまる妄想ですから、周囲の人はあまり深刻にならず、疑われている介護者が疲弊しないよう心理的な支援をすることが大事です。こういう妄想は、時期が来れば自然に見られなくなります。妄想的になりやすい素質を持った人にストレスがかかったときに、単純なもの盗られ妄想から「嫁は家の財産をねらっている」とか「家を乗っ取られる」といった妄想に発展します。これには「妄想的になりやすい」という素質が深く関与しているので、妄想を治療する抗精神病薬が効果を上げることが少なくありません。単純な「もの盗られ妄想」にしては訴えがオーバーだったり執拗だったりするときは、妄想の対象となっている人を守るためにも、本人の症状を軽減するためにも、まずは受診していただき相談していただくことが重要です。

自分のことや周囲で起こっていることが正しく把握できなくなると、行動がちぐはぐになり、日常生活にも支障が出てきます。「徘徊」を例に原因を探ってみます。

  • (1) 図書館で数時間過ごすのが日課のAさん。ある冬の日、いつもより2時間遅く出かけたため、暗くなった帰り路、道に迷い夜遅く疲れ果てた姿で自宅に戻ってきた。
  • (2)Bさんは、日曜日の朝、通っている教会に行こうと自宅を出たが迷子になり、昼過ぎ、とぼとぼと家に戻った。
  • (3)Cさんは、夕方になると、遠くの郷里に帰ると言ってたびたび家を出て行こうとするが、ある日、介護者が目を離した隙に出て行き、行方不明になり、翌日、思いがけない場所で保護された。
  • (4) Dさんは、妻と買い物の途中、行方不明になった。2日後に遠く離れた町で保護された。
  • (5) Eさんは、家の中でも外でも、じっとしていないで歩き続ける。人や物を押しのけ、突き飛ばしてとにかく歩く。

(1)(2)の場合は場所の見当識障害が原因です。Aさんは昼間、風景が見えれば大丈夫なので明るいうちに帰れるように工夫すれば一人で活動できます。Bさんはもう少し症状が進んでおり、送り迎えのボランティアが必要かも知れません。(3)のCさんの症状は、脳の活性が徐々に下がってくる夕方に、場所や時間の見当識障害が深まるようです。昼寝などで夕方の意識をはっきりさせ、場合によっては薬を使います。(4)のDさん、(5)のEさんの場合は、認知症が進行して常に誰かが見ていないといけません。介護者の支援が必要です。 「徘徊」といってしまえば終わりですが、原因を想像すれば対応策も自然にでてきます

治療法

早期受診、早期診断、早期治療は非常に重要です。
原因が正常庄水頭症とか、脳腫瘍、慢性硬膜下血腫などの場合、脳外科的な処置で劇的に良くなる場合もあります。甲状腺ホルモンの異常の場合は、内科的な治療で良くなります。薬の不適切な使用が原因で認知症のような症状がでた場合は、薬をやめるか調整すれば回復します。ところが、こうした状態のまま長期間放置すると、脳の細胞が死んだり、恒久的な機能不全に陥って回復が不可能になります。一日も早く受診することが重要です。

アルツハイマー病では、薬で進行を遅らせることができ、早く使い始めると健康な時間を長くすることができます。病気が理解できる時点で受診し、少しずつ理解を深めていけば生活上の障害を軽減でき、その後のトラブルを減らすことも可能です。 障害の軽いうちに障害が重くなったときの後見人を自分で決めておく(任意後見制度)等の準備や手配をしておけば、認知症であっても自分らしい生き方を全うすることが可能です。

進行が遅い人や止まってしまう人もあります。しかし、認知症によって脳の障害がどんどん進行する場合、精神機能の障害だけでなく身体機能の低下が起こり、数年から十数年の経過で歩行ができなくなり、寝たきりになります。最終的には口から食べ物をのみ込むことができなくなり、肺炎を繰り返すようになってしまいます。

認知症が進行して寝たきりになる頃には、自分で介護や医療上の決定ができなくなります。しかし、現在の日本では、だれかにインフォームドコンセントの権限を委任するという法的制度がありません。法定後見人にも医療上の代諾権はないとされています。

早期に診断を受けても、できるだけ自分の力で生きていきたいと思う人、あるいは、頼るべき人もなく、自分で生きて行かざるを得ない人も少なくありません。そういうときは、日常生活自立支援事業や新しい成年後見制度(補助や任意後見)を活用しましょう。かかりつけ医や相談に乗ってもらうケアマネジャーを持ち、これらの制度を十分利用すればかなり進行するまで自分の意思に沿った生活をすることができます。

終末医療や介護の方針については、信頼できるだれかに任せなければならないので自分の回りにいる人たちと十分コミュニケーションを保ち、自分の生き方や考え方を理解してもらいましょう。本人に代わって意思決定を代行するときは、本人のこれまでの人生、価値観、現在の状況、医学的な現状の評価と予後の見通しなどを参考に、決定をしなければなりません。認知症を完全に治す治療法はまだありません。そこでできるだけ症状を軽くして、進行の速度を遅らせることが現在の治療目的となります。

治療法には薬物療法と非薬物療法があります。このうち薬物療法は、アルツハイマー病の中核症状の進行をある程度抑える効果が期待される薬が若干あるだけで、脳血管性認知症に効果がある薬剤は今のところ存在しません。そのため、非薬物療法によって症状を抑えることが主な治療法となります。

中核症状への治療

アルツハイマー病では、塩酸ドネペジル(商品名:アリセプト®)、ガランタミン(商品名:レミニール®)、リバスチグミン(商品名:イクセロン®、リバスタッチ®)などの抗コリンエステラーゼ阻害薬に中核症状の一時的な改善効果が認められています。この効果は一時的で、進行を完全に抑えるものではありません。進行を遅らせるだけですので、できるだけ早くから治療を開始して、少しでも軽症の段階にとどめるようにすることが大切です。周辺症状は中核症状よりも介護者の強い苦痛になることが多く、効果的な薬をつかって症状をおさえたくなるのですが、かつて周辺症状に使われていた薬の中には、認知症の症状をかえって悪化させるものがあるので、薬物療法には慎重を要します。 まずは薬に頼らず、患者さんを刺激しない(例:つじつまの合わない話を患者さんがしても否定したり、叱ったりしないで耳を傾ける態度をとる)、規則正しい生活をおくるようにこころがける、環境を急激に変えないようにする、などを基本とします。
また、認知能力を高めるためのリアリティ・オリエンテーション(常に問いかけを行い、場所・時間・状況・人物などの見当識を高める)、簡単な楽器演奏や運動などで刺激を与える、過去を回想するなどの療法を行う場合もあります。
症状が進んでくると周辺症状も徘徊や便こねなど激しくなってきます。この段階になっても薬を使わないことにこだわって、介護者が疲れ果ててしまうようなことがあってはなりません。こうした激しい周辺症状に対しては薬物治療を試すこともあります。

  • 出典:認知症サポーター養成講座標準教材(特定非営利活動法人地域ケア政策ネットワーク 全国キャラバンメイト連絡協議会作成)
  • 出典:「家族が認知症と診断されたら読む本」(朝田隆 著 日東書院)